|
|
祈りと鎮魂と
数万年前、数十万年前もの間、きびしい自然とたたかいながら生きてきた人類の祖先たちにとって、稲妻、雷鳴、火山の噴火、洪水、地震、台風、日照りなど自然現象の全ては、神のわざであると考えられました。神の力をやわらげ、怒りをしずめるためには、狩猟・採集の際に経験的に知った、よい香りのする動植物をささげて祈りました。紀元前に発祥したエジプト・インダス・中国などの古代文明では、さまざまな香料が、日常のくらしに、死者のとむらいに使用され、文明史をいろどっています。 |
|
|
|
香木伝来
推古3年(595)、淡路島の漁師が流れついた流木を燃やしたところ、すばらしい香りがたちこめたので、帝に献上したという伝承が日本書紀に記されています。日本への仏教の伝来は538年ですから、当時数多くの貴重な香木が仏教とともに伝わったと思われます。 |
|
鼻で聞く
754年、多くの仏典を持ち、苦労の末に日本へ渡来した中国の名僧鑑真は、同時に香木も伝えました。彼は失明していても「聞けば直ちに香りをあてる」聞き手だったといいます。香りは仏前の供香のほか、物語や和歌にも書かれ、衣服や部屋にたきしめて使うなど、くらしに欠かせぬものになっています。 |
|
おまるの中味は?
平安の頃のプレイボーイ「平中」の香にまつわるエピソード。彼は恋する女性をあきらめきれず、せめて彼女の「おまる」の中でも見ればあきらめられるだろうと、手に入れた「おまる」のふたをあけてびっくり。なかにはすばらしい香りの香が入っていたのです。 |
|
|
|
線香の完成
香が一般的に普及したのは江戸時代から。それに棒状の線香も16〜17世紀に大陸から製法が伝わり完成しました。線香の誕生は、香料調合の進歩と、安価で手軽な製法で、香が大衆のものになったことを意味し、以後、時代の推移とともに成長しながら現在にいたっています。 |
|