苔がいちめんにはえ、庭木の緑が美しい静かな部屋で、香をたくのは、美しものです。香道では、香りをかぐことを「聞く」といいますが、これは香りに質問して答えを聞くことなのです。
古い中国の書物にも「聞香」という言葉があり、香炉を前に、たちのぼる煙をみつめ、香りを楽しんでいると、この言葉がぴったりです。
あなたも一度ためしてみてください。きっとクレオパトラやナポレオンや小野小町など、古今東西の人々が、香りを愛好した気分がわかるかも知れません。
ひと筋の香煙をみつめていると、あなたの心は微妙に動かされ、過去、未来を超えた幻想の世界へ誘われることでしょう。
無味乾燥な心のうるおいとやさしさをよみがえらせる貴重なひとときを持つことは、いま最も必要なことではないでしょうか?
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